記事一覧

意識的に信用保証付融資の回収を劣後させたとき

信用保証協会保証付融資とプロパー融資が併存している先の業況が急激に悪化してきた。プロパー融資については不動産担保があるものの、保証付融資については無担保である。金融機関は、取引先名義の預金があったため、期限の利益喪失後ただちにプロパー融資のみ預金相殺により全額回収した。預金相殺についてはプロパー債権優先とされていることから、特に問題にならないものと考えてよいか。

預金相殺については原則としてプロパー債権優先となっているが、プロパー債権が担保により保全されている場合は、無担保である信用保証協会保証付融資が優先となる。したがって、故意・重過失による取立不能として保証免責となる。

預金相殺は原則プロパー優先だが例外あり
金融機関と信用保証協会との約定書(例)には、「金融機関は、債務者が被保証債権の履行期限(分割履行の場合の各履行期日を含む。)に履行しない場合には、信用保証協会の保証していない債権の取立と同じ方法をもって、被保証債権の取立をなすものとする。」という条項がある。これは同等管理義務と呼ばれているものであり、金融機関は、事故発生後においては信用保証協会保証付融資とプロパー債権は同等に管理する義務を負担することとなっている。しかしながら、預金相殺についてはその例外として、実務上原則としてプロパー債権優先となっている。ただし、預金相殺の取扱いについては、以下のように保証付融資が優先となる場合もある。

①預金相殺の対象となる預金がある支店に保証付融資があり、他の支店にプロパー債権がある場合

②プロパー債権が保証人に対する請求権である場合

③プ口パー債権が他の担保等により保全されていることが明らかな場合(信用保証協会が代位弁済することにより当該担保の移転を受けることができる場合を除く)

④プロパー債権が商業手形の支払人口債権である場合、保証付融資に優先充当するべきであり、プロパー債権に優先充当した場合は、保証免責となる。

代理受領・債権譲渡等の条件に反したとき

ある輸入貿易商社では、毎年夏場にビールを輸入することから、季節資金が発生していた。そこで、その季節資金を信用保証協会保証付融資で対応しようとしたところ、協会からその商社の販売先に対する売掛債権の譲渡担保を保証額以上確保するという条件が付けられた。ところが、ビール輸入時期に保証付融資額以上の売掛債権が集まらず、保証付融資額の3分の2しか譲渡担保債権額が確保できなかった。その後、その商社の業況が悪化し、ビール輸入代金として実行した保証付融資の代位弁済を請求する必要が発生したが、譲渡担保債権によって回収できなかった部分にづいて代弁が受けられるであろうか。

金融機関は信用保証協会との保証契約内容マある保証条件(担保・保証人等)に違反すれば保証免責となるのが原則である。しかし、上記の場合、信用保証協会保証付融資額以上の売掛債権が発生しなかった原因は、金融機関にあるのではなく、申込人にある。したがって、金融機関に故意または過失がない限り、保証免責とはならない。

保証免責は金融機関の故意・過失を要件とする
保証条件において、販売先に対する売掛債権の譲渡担保を保証額以上確保するという条件が付された場合、金融機関は申込人に担保提供の協力を求める努力を果たさなければならない。しかしながら、その努力には限界があるのであり、そもそも期待していたほどの売掛債権が発生しない場合も想定されるし、それが発生したとしても申込人が担保提供に協力しないことも考えられる。これらの場合、金融機関が金融機関として通常行うべき対応をしているのであれば、故意・過失がないことから保証免責とならない。逆に言えば、金融機関として通常行うべき対応をとっていなかった場合は、保証免責となる。さらに、金融機関が全く担保提供を求める努力を果たさなかったような場合は、信用保証制度の趣旨・目的に抵触しているものとして、全部免責となる。

保証人の保証徴求を失念したとき

代表者1名(社長)を保証人として、無担保の信用保証協会保証付融資を申込んだところ、信用保証協会は代表者以外に実質経営者1名を保証人として立てることを条件とした。ところが、社長を保証人として徴求したものの、実質経営者を保証人として微求するのを失念してしまった。しかし、代表者(社長)の保証はきちんと徴求しているし、実質経営者からの保証徴求は追加的に条件となったものであり、免責とまではならないのではないか。

保証条件保証人の未徴求により求償権侵害が発生した場合には、保証免責となる。

事実判明後ただちに連絡を
保証協会の信用保証委託契約上の保証人を金融機関の貸付契約上の保証人に徴求するよう条件がつけられる場合がある。これは、信用保証協会保証付融資について事故が発生した場合、保証協会が金融機関へ代位弁済する前に、金融機関においてできるだけ取立をしてもらい、代位弁済額を少なくすることを目的とするものである。信用保証書の記載内容と異なる保証付融資は、保証契約違反となり免責となるのが原則である。

しかし、保証契約違反に形式的に該当したとしても、金融機関に故意または過失がなく、求償権侵害が生じていない場合には保証免責とならないとするのが基本的な考え方である。上記の場合、保証人徴求漏れめ事実が判明した時点で、ただちに保証協会に相談し、実質経営者の保証徴求の措置を講じなければならない。事後的にであっても保証徴求ができた場合は、形式的には保証契約違反であるとしても求償権侵害が生じていないことから、基本的には保証免責となることはない。また、当然のことながら、保証条件保証人の保証意思確認をしておかなければならない。

保証金額と貸付金額が異なったとき

1,200万円の信用保証協会保証付融資申込みをしたところ、保証協会の保証決定額が必要資金等との関係から300万円に減額された。ところが、取扱金融機関は、当初の予定通り1,200万円で信用保証協会保証付融資を実行した。この場合、保証免責となるか。

原則として差額相当額について保証契約違反として免責となるが、保証金額と貸付金額に大幅な相違がある場合は、信用保証書に記載された貸付が行われていないため、そもそも保証契約の効力が生じていないものと考えられる。

保証免責または保証契約の効力不発効
金額の相違には、貸付金額が保証金額を超えている場合と保証金額より少ない場合があるが、いずれの場合も保証免責となる。信用保証協会は信用保証制度の目的を確保するため信用保証協会自らが当該貸付に関して調査・審査し保証の内容(貸付条件、保証条件)を決定している。言うまでもなく、保証金額は最も重要な要素であり、事業計画、返済計画の妥当性の判断や貸付条件、担保、保証条件に大きな影響を与えるものである。したがって、保証金額と貸付金額に大幅な相違がある場合は、保証免責が問題となるばかりでなく、そもそも約定書例2条1項に基づく保証契約の効力が生じていないものと考えられる。もっとも、実務上金額相違が問題となるのは、次の極度保証(根保証)における貸付(割引を含む)期間中の極度超過の場合である。極度保証(極度貸付、当座貸越、手形割引の各根保証)は一定の極度額と取引期間を定め、その範囲内で反復継続して行われる貸付等に対する保証である。この保証は、貸付期間中の貸付等の金額が常時極度額以内であることが条件となっているので、極度の超過があったときは次の場合を除き免責となる。

①手形割引根保証において、当該保証で割引した手形が不渡りとなり買戻しができないときに、一時的に極度額を超過して別の手形を割引き、同日中にその代わり金をもって買戻しをさせ割引残高が極度内に収まる場合

②当座貸越根保証(貸付専用型、事業者カードローン)において、利息徴収が元加方式で利息の支払日と元本の返済日が同日のとき、利息元加処理が先行することにより一時的に極度超過となるが、同日の元本返済によって同日中に貸越残高が極度内に収まる場合

保証付債権の保全に過失があったとき

甲社には。信用保証協会保証付融資5,000万円(無担扱い)とプロパー融資2,000万円があり、プロパー融資の担保として根抵当権5,000万円の設定がある。同社は業績が低迷しており、返済遅延がしばしば発生する先である。そこで、所有不動産を売却させプロパー融資2,000万円を返済させたところ、根抵当権5,000万円解除の申出があった。すでにプロパ一融資は回収しており、保証付融資のみであったので、申出に応じて根抵当権を解除した。何か問題があるだろうか。

信用保証協会保証付融資についても、プロパー融資の保全と同様の管理注意義務があり、延滞または事故報告書提出事由発生後においては、プロパー融資かなくなっても、保証付融資が残っていれば、協会と協議することなく担保の解除に応じてはならない。協会に無断で担保解除した場合は、担保保存義務違反として保証免責となる。

約定書(例)内容の把握を約定書例の債権保全、取立の項目において、「金融機関は、常に被保証債権の保全に必要な注意をなし、債務履行を困難とする事実を予見し又は認知したときは、遅滞なく保証協会に通知し、且つ適当な措置を講じるものとする」とあり、さらに、「金融機関は、債務者が被保証債権の履行期限(分割履行の場合の各履行期日を含む)に履行しない場合には、保証協会の保証していない債権の取立と同じ方法をもって、被保証債権め取立をなすものとする」と規定している。また、約定書例の免責事由の一つとして、「金融機関が故意若しくは重大な過失により、被保証債権の全部又は一部の履行を受けることができなかったとき」とある。

信用保証協会が保証条件としていない担保(保証条件外担保)であっても、信用保証協会保証付貸付債権は当該担保が根抵当権である以上、被担保債権の範囲に含まれている。なおかつ金融機関は、信用保証協会との関係では担保保存義務が免除されていないことから、原則として信用保証協会の承諾なくして担保や保証人を解除することはできない(民法504条)。しかし、信用保証協会の実務上の取扱いとしては、延滞または事故報告書提出事由が生じる前であれば、金融機関が保証協会に協議することなく解除に応じたとしても、担保保存義務違反を問わないこととしている。上記では、延滞または事故報告書提出事由が生じた後に解除に応じたのであれば、前述の保証免責事由に該当することとなる。

担保の事実を偽り申請したとき

ある金融機関で取引先の不動産担保の実地再調査を行ったところ、更地であるはずの土地の上に未登記建物が建てられ従業員の居宅として利用されていることが判明した。さっそく、当該建物の登記と追加担保設定を取引先に依頼したが、どうしても承諾を得ることができなかった。そこで、その金融機関はその事実を隠して、その物件を条件担保として信用保証協会保証の申込みをした。問題ないであろうか。

不動産については、金融機関が徴求している担保を保証条件として保証協会宛優先充当する場合(条件担保)等は、登記事項証明書等の書類チェックのほか、実際に現地を確認する等相応の調査を実施すべきと考えられる。上記のように金融機関が担保に関する事実を故意に偽って信用保証協会保証を利用している場合は、当然に保証免責となる。

条件担保を提供するには適切な調査が必要
条件担保とは、金融機関の設定している根抵当権を利用して、保証付融資のために確保する方法である。また、いわゆるでき上がり物件、購入物件も、条件付きで担保とすることができる。更地を保証条件担保としたが、初めて保証条件とした当初より未登記物件が存在した場合、例えば金融機関が通常行うべき方法により担保調査を行わなかったことにより未登記物件の存在を把握できなかったときや、未登記物件の存在を知りながら信用保証協会に報告をしなかったときは、保証条件違反として保証免責となる。上記のように、条件担保を悪用して、自行で評価できなくなった担保を協会に提供し、信用保証協会保証付融資を申込むことは、信用保証制度の趣旨・目的に抵触する行為であり、全部免責となる。

分類資産を減らす目的で信用保証付貸付を利用したとき

A社は販売先の倒産により大口の不良債権をかかえこんだ。前期までA社は、まずまずの利益をあげていたが、今期は不良債権償却により赤字に転落してしまう見通しである。また、A社の利益水準からは、当該不良債権を利益により埋めていくには長期間にわたってしまう。自己査定において、分類債権が発生することは必至の状況である。そこで、取引金融機関は前期までの黒字決算をもとに、不良債権発生の事実を隠して、信用保証協会保証を申込みさせ、保証付融資金にて資金繰りを回転させながら不良債権め一部を処理させた。そして、自己査定において、この貸出は正常運転資金の範囲内として全額非分類とした。

分類資産を減らす目的で信用保証協会保証付融資膏利用しようとすると、①分類債権を保証付資金で回収するか、②取引先の問題を隠して、正常先として保証を申込みさせることになる。①は旧債振替の禁止、②は信義則に反することになり、いずれも保証免責となるものと解するべきである。

調査結果は協会にも通知
金融機関は、信用保証協会の判断に誤りや漏れがないように、信用保証協会からの求めの有無にかかわらず、提供可能な資料の提供に誠実に応ずる義務があることは、信用保証制度の趣旨や信義則に照らして当然のことである。したがって、自己査定において分類債務者であることを明らかにしたうえで、事前に保証協会と相談すべきである。

ところが、当該金融機関が故意または過失によって分類債務者であることを明らかにせず、その結果、信用保証協会の判断を誤らせるに至った場合は、当該金融機関は、上記義務に反し、ひいては信用保証協会との保証契約に反するものとして免責となる。旧債振替については、全く認められないというものではなく、中小企業にメリットがあれば承認を得ることができる。すなわち、中小企業者に寄与するという立場で、協会と協調して対応すべきである。

手形割引根保証において融通手形を割引いたとき

手形割引根保証を利用して信用保証付の割引取引を行っている先で、同業者間の手形の割引依頼があったが、当該支払人の業況・業績が悪化したとの芳しからぬ風評が出回っており、間違いなく融通手形と判断された。しかし、その取扱金融機関では融通手形と知りつつ、保証付手形の利用を続けた。ほどなく、当該割引手形(融通手形)の不渡りが発生してしまったが、代位弁済が受けられるであろうか。

手形割引根保証の取扱い上の要件としては、①中小企業者と金融機関との間に常に主債務の発生を可能とする基本約定が存在すること(例えば、銀行取引約定書や信用保証協会専用の手形割引約定書など)、②手形割引残高が常時極度額以下であること、③保証期間内に割引かれたものであること、④割引手形は商業手形であること、などが定められている。上記の場合は、④の割引手形は商業手形であることに抵触することから、金融機関としての注意を払ったならば明らかに商業手形でないと判明したにもかかわらず、それを怠ったときは保証免責となる。

融通手形は信用保証付割引の対象外
割引手形は商業手形でなければならないという意味は、融通手形や専用約束手形等は根保証の対象とならないということである。すなわち、融通手形は正常な商取引に基づいて振出された手形ではなく、資金調達(金融)を目的として提出されたものであることから、信用保証の対象とならないのである。したがって、金融機関の故意または過失により融通手形の割引を行ったときは保証免責となる。上記においては、悪質にも取扱金融機関が融通手形と知りつつ、信用保証付の手形割引を利用した場合であることから全部免責となる。

ページ移動